インプラント周囲炎について

インプラント(人工歯根)はチタン製のため、むし歯にはなりません。しかし長期間メインテナンスを怠り、歯石やプラーク(細菌のかたまり)が付着したままだと天然の歯と同じようにインプラント周囲の歯茎が腫れたり、出血や膿がでるといった症状を起こします。進行するとインプラントを支えている周りの骨が溶けていきます。このいわゆる歯周病(歯槽膿漏)と同様の状態を『インプラント周囲炎』といいます。しかも天然の歯の歯周病と違い、骨の減少・進行が比較的早いです。インプラント周囲炎が進行すると、最悪の場合、せっかく手術をして埋め込んだインプラントを撤去しなければいけなくなることがあります。

細菌のかたまりであるプラーク(歯垢)や歯石がうまく清掃できていれば炎症を起こすことはありません。インプラント周囲炎を防ぐには、ご自身の歯と同様に、定期的に通院してメインテナンスやクリーニングをする必要があります。

歯周病とインプラントの残存率

インプラントの残存率は歯周病のない健康な方と、歯周病で歯を失った方とで差があります。

10年後のインプラント残存率

①歯周病のない健康な方 … 96.5%

②歯周病により歯を失った方 … 90.5%

歯周病で歯を失った方はインプラント周囲炎を起こしやすく、インプラントを失う確率が高くなる傾向にあります。

歯周病で歯を失った方のインプラントにおける注意点

残念ながら歯周病になりやすい体質の方もいらっしゃいます。そのため、歯周病になったことのある方(②の方)がインプラント治療をする場合は、残っている歯の歯周病の治療をきちんと行って口の中の細菌の数を減らしてから治療を行わなければなりません。

また、健康な方(①の方)より、メインテナンスの間隔も短くするなど、術後も定期的なクリーニングが必須になります。

先のことを考えた医院選び

定期的にメインテナンスを受けるには、医院選びも重要となります。

最近では新聞記事やCMを見てわざわざ遠方までインプラント治療に通われる方もいらっしゃるようです。しかし、その後高齢になり年に数回のメインテナンスを受ける時や、インプラントのかぶせが壊れたり、緩んだりした場合、治療のやり直しがある場合は、遠方まで通うのは大変です。

また、将来的にご自身で十分な歯磨きをすることが難しくなった場合には、清掃しやすい状態に設計を変更することも考えなくてはなりません。そのようなことを考えるとインプラント治療は在住している地域や通院できる範囲内で受ける方がいいと思います。

インプラントで最も大事なこと

インプラント治療の10年後の残存率は大体90%程度ですので、決して悪い成績ではありません。40年以上問題なく過ごされている方もいらっしゃいますので、一生通して使っていくことも十分可能です。インプラント治療で最も大事なのは、治療が終わった後のメインテナンスやクリーニングを定期的に受けることができるかということです。